構造の数値計算

構造解析を体験する

2年次以降に骨組みの構造解析を学びます。講義名は構造力学です。構造解析とは構造物に外力が作用したとき部材に発生する変形や力を解析することです。講義では解析の原理と手計算で解析する方法を学びますが,実務ではなんらかの構造解析プログラムを使用することがほとんどです。

ここでは,構造解析の原理はともかくとしてプログラムを使っての構造解析を体験します。

1.柱

問1 建物の柱は地震の時どのくらい変形するのでしょうか。鉄筋コンクリートの柱で試算してみましょう。断面寸法が50x50cmで高さが4mの鉄筋コンクリートの柱で考えてみましょう。この柱には地震の時は200kNくらいの水平力が作用すると考えられます。

図1 片持ち柱

それでは構造解析プログラムを使って計算してみましょう。

使用するプログラム

femSI.xls : 解析モデル,荷重の設定と解析の実施。解析条件を定めたファイルを作る。
femSI.exe: 解析条件ファイルを用いて構造解析を実施。計算結果を図示する。解析条件ファイルはfemSI.xlsで作ると楽である。

ここでは解析条件ファイル(構造物の形体や部材の条件を記したファイル)を作ってあるので,femSI.exeを用いて計算します。column1.txtを使って解析してみましょう。

fem.exeの使い方

問1の答え

問2 柱の長さが問1の半分の2mになったときの柱上端の水平変位は何センチですか。予測してみなさい。

  1. 柱の長さが半分なので変位も半分になる。
  2. a.よりも小さい。
  3. a.よりも大きい。

column2.txtを使って解析を実施し,予測した答えが正しいか確かめなさい。

問2の答え

2.はり

問3 問1と同じ4mの部材(断面50x50cm)をはりとして使用し,中央に20tonの力を加えたときの加力点の変形はどのくらいになりますか。問2の何分の1になるか答えなさい。

図2 単純ばり

支持条件について
 構造解析をする場合には部材の支持条件には以下のような条件を与えます。

  1. ピン:回転は自由だが,位置は移動しない。
  2. ローラー:回転は自由で,ある方向にのみ移動もする。
  3. 固定:回転も移動も拘束する。

問1と2では柱は根本で固定支持されており,問3でははりの左端はピン支持で右端はローラー支持です。
beam1.txtを使って答えを確かめなさい。

問3の答え

問4 問3のはりの両端を固定支持にするとはりの変位や応力はどのように変化しますか。荷重条件は問3と同じ。

beam2.txtを使って答えを確かめなさい。

問4の答え

問5 荷重を2等分し,はりのスパンの1/3と2/3の位置にかけたら変位と応力はどのおように変化しますか。

beam3.txtを使って答えを確かめなさい。

問5の答え

3. 門型ラーメン(はりと柱からなる構造物)

問6 図3のような1本のはりと2本の柱から構造物に40tonの水平力が作用したときの加力点での水平変位はどのくらいになりますか。部材の断面寸法はどれも50x50cmです。

柱1本あたりの水平力の大きさは問1と同じです。問1より変位はおおきいでしょうか小さいでしょうか。frame1.txtを使って解析し答えを確かめましょう。

図3 門型ラーメン

上図の丸数字は部材番号,数字は節点番号です。
                      

問6の答え

曲げモーメントと変形の関係


力の流れ

構造設計をする上で力の流れをつかむことが大切だと言われています。
frame1.txtの計算結果から力の流れを確認しなさい。

frame1.txtによる計算結果

部材 節点1 節点2 N1[kN] Q1[kN] M1[kN×cm] N2[kN] Q2[kN] M2[kN×cm]
1 1 2 -171 201 46074 171 -201 34237
2 2 3 199 -171 -34237 -199 171 -34030
3 3 4 171 199 34030 -171 -199 45659

計算結果の見方
N,Q,Mは部材端部に作用している荷重を示しています。
N 部材を軸方向に押す力
Q 部材を軸に直角方向に押す力
M 部材を曲げようとする力
部材を水平に置き,節点1を左,節点2を右に置いてください。
右向き(N)か上向きの力(Q)が正です。
左向き(N)か下向きの力(Q)が負です。
反時計回りの力(M)が正です。
時計回りの力(M)が負です。

部材@

          ↑Q1=201kN     ↓Q2=-201kN
N1= -171kN ← ================ → N2= 1711kN
       節点番号1      節点番号2  

部材A

          ↓Q1= -171kN    ↑Q2= 171kN
N1=  199kN → ================ ← N2= -199kN
       節点番号2      節点番号3  

部材B

          ↑Q1= 199kN    ↓Q2= -199kN
N1=  171kN → ================ ← N2= -171kN
       節点番号3      節点番号4  

次に力の流れを確かめます。

節点番号2における力の流れ

外力400kN →  
 部材Aへの軸方向荷重 201kN →
 部材@への軸直角方向への荷重 191kN →

接点番号3における力の流れ

 部材Aへの軸方向荷重 -199kN ←
 部材Bへの軸直角方向への荷重 199kN →

筋交いの役割

問7 図のように筋交いをいれて変位や応力がどのように変化するか確認しなさい。
frame2.txtを使って答えを出し,問6との比較から筋交いに役割を説明しなさい。

frame2.txtの計算結果を使って力の流れを確かめましょう。
部材を一つずつに分解して部材端部にかかる力を絵に描いてみると簡単にわかります。

部材 節点1 節点2 N1[kN] Q1[kN] M1[kN×cm] N2[kN] Q2[kN] M2[kN×cm]
1 1 2 -383 14 3342 383 -14 2195
2 2 3 14 -11 -2195 -14 11 -2181
3 3 4 11 14 2181 -11 -14 3314
4 2 4 527 0 0 -527 0 0


2の節点で力の流れを確認します。

筋交いを入れることによって外力のほとんどが筋交いに流れていくことがわかります。また,筋交いに力が流れることによって部材@の軸力が極端に大きくなっています。

このようにただ筋交いを入れるだけで建物が強くなるわけではありません。筋交を入れることによって部材@の軸力が171kNであったものが383kNと倍になっています。

問8 図のモデルを使って応力を計算し,力の流れを説明しなさい。
frame3.txtを使って応力解析できます。

この場合も部材を1つずつに分解して端部に作用する力を描いていけば力の流れが理解できます。

構造のバランス

構造物を設計する際にはバランスのよい計画を立てることが重要であると言われます。バランスがいいとか悪いとかと言うことはどのようなことでしょうか。
応力解析で確認しましょう。

はりの曲げ剛性が柱に比べて極端に低い場合

はりの曲げ剛性が極端に低いモデルを使って応力解析し,応力図を確認して何のバランスが悪いか,曲げモーメント図を使って説明しなさい。
frame4.txtで計算できます。この場合ははりの寸法を25x25cmとしました。

2本の柱の剛性が極端に異なる場合

図3のモデルで部材Bの柱の寸法のみ25x25cm,他の部材の寸法を50x50cmとしたらどうなるでしょう。どのようなことが起きたかせん断力図を使って説明しなさい。
frame5.txtを使って計算できます。

問9 どうしてピロティーがいけないの?

地震の時,ピロティー形式の建物は被害を受けやすいと言われています。
3x1frame3.txtを使って応力解析して,どこがいけないのか説明しなさい。
ヒント:応力に着目しなさい。

1階の柱と2階のはりの剛性を高めるたりすることもバランスの悪さを解消する手段ですが,1階に筋交いを入れてピロティーをやめるか,2,3階の筋交いをやめた方が効果があります。これほどピロティーとは難しい構造と言えます。

骨組みを改良するためには自分でfem.xlsでデータを作る必要があります。
使い方はここにあるので興味のある人は挑戦してみてください。


トラスの不思議

トラスの原理

部材の両端がピンの(曲げ剛性が極端に小さい)部材でも3角形をつくることで構造的に成り立つようになります。
truss0.txt(トラスでない構造,部材は50x50cm)とtruss1.txt(トラス構造,部材断面は10x10cm)を使って応力解析し,変形や部材の応力を比較しなさい。
 なお,支点1はピン,支点4はローラーです。

トラスは部材に軸力だけが発生します。

力の流れ

truss1.txtの計算結果から軸力の流れを説明しなさい。

部材 節点1 節点2 N1[kN] Q1[kN] M1[kN×cm] N2[kN] Q2[kN] M2[kN×cm]
1 1 2 0 0 0 0 0 0
2 2 3 100 0 0 -100 0 0
3 3 4 100 0 0 -100 0 0
4 1 4 0 0 0 0 0 0
5 1 3 -141 0 0 141 0 0

圧縮される部材と引っ張られる部材

トラスには圧縮される部材と引っ張られる部材があります。turss2.txtを使った計算から軸力がどのように作用しているか調べて見ましょう。

計算結果の見方
設点1を左,設点2を右になるように水平に部材をおく。
Nが正なら設点を左から右に押している。
  正の力 →
Nが負なら節点を右から左に押している。
  負の力 ←

圧縮材:節点1の荷重は正で,節点2の荷重は負
  → ==== ←

引張材:節点1の荷重は負で,節点2の荷重は正
  ← ==== →

部材1:軸力はゼロ
部材2:圧縮で100kN
部材3:圧縮で10kN
部材4:軸力はゼロ
部材5:引張で141kN

節点での力の釣り合い

節点では力が釣り合っています。
力の釣り合いを確かめるには部材端部の反力を使います。(外力を考えたときは,外力と反力が釣り合うように考えるから)
反力は部材端部の荷重と同じ大きさで向きが逆になります。
節点3と例に取って確かめてみます。

部材2,3,5から節点3に働く反力を調べます。

部材2では →(100kN)
部材3では ↑(10kN)
部材5では 左斜め下向き(141kN)
 これら3つの力を力の大きさを辺の長さにとって上から順番に描いていくと直角三角形ができます。
 これを力の多角形といいます。
 力の釣り合いを考えるときは,外力,部材端部の反力で考えます。

問10 いらない部材はどれ?

軸力が発生していない部材は構造的には不要です。truss2.txtの計算結果からいらない部材はどれか説明しなさい。
節点1はピン支持,節点4はローラー支持になっています。

斜材の向きを逆にした場合はいらない部材はどれですか。また,この場合の力の流れも説明死さない。
truss2.txtを使って計算できます。

部材 節点1 節点2 N1[kN] Q1[kN] M1[kN×cm] N2[kN] Q2[kN] M2[kN×cm]
1 1 2 -100 0 0 100 0 0
2 2 3 0 0 0 0 0 0
3 3 4 0 0 0 0 0 0
4 1 4 -100 0 0 100 0 0
5 2 4 141 0 0 -141 0 0


解析条件ファイルを作る

fem.xlsを用いて解析条件ファイルを作れば,いろいろな構造物の解析ができます。fem.xlsの使用方法を参照してください。